さきごろ映画化もされた海堂尊のデビュー作「チームバチスタの栄光」(2006年1月)は、あっという間に、2作目 「ナイチンゲールの沈黙」(同年10月)と続き。以降「螺鈿迷宮」(同年11月)、「ジェネラル・ルージュの凱旋 」(2007年4月)、「ブラックペアン1988」(同年9月)と、短期間であれよあれよと続編が登場。今年3月には、新作 「ジーン・ワルツ」も上梓されたもようで、ともかく、私にとってかなり気になる「医療サスペンスシリーズ」として定着した。
作家は、現役の医者。
...だからネタもテーマも事欠かないだろうけど、執筆時間はどこから捻出されるのだろうか?などと、ぼんやりしているうちに、番外編まで登場。
すごいなー。
それがこの「医学のたまご」だ。
主人公の少年は、劣等性気味の中学生。なのになぜか東城大学医学部に飛び級で通うことになって、「白い巨塔」そのままの大学病院医療の矛盾に巻き込まれることになる。
強烈キャラの厚生労働省官僚・白鳥は残念ながら登場しないが、うだつの上がらない風の中年精神科医・田口はちらっと登場。
その他にも、思わず「コレは!」と、関連作にあたりたくなる工夫が多数。
主人公の父親は、ゲーム理論の権威で海外の大学にて研究中。遠く離れた父と子がインターネットで交わす会話が、ちょっといい。
だから、もちろんこの本だけでも充分楽しめるけど、シリーズ作の「ブラック・ペアン...」までは読んでからこちらにあたることをおススメ。
ちなみに、私は、このひとつ前の「ジェネラル・ルージュ」まで読了。
やや引っかかるシーンが少しあって、ややストレス(笑)だ。
たぶんその引っかかりは、「ブラック・ぺアン...」で描かれてるんだろう。
さて、医者として生きてきた海堂氏は、44歳にて作家デビュー。物語をまとめたのは、なんと小学6年生以来のことだったとか。
参考までにアマゾンにて検索すれば、このシリーズ以外にも短篇も含め、たった2年半で完成度の高い物語を10作も?...驚きだよ。
人が何かをなすべき時が必ずあって、そのチャンスをきちんと見極めて踏み出し努力した。
....ってことか。
この作家の生き方の軌跡も、なにか物語めいている。