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ココロはいつも休暇中



鴎外の物語の無縁坂

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月に1冊は、明治大正の文豪作品を読もうと決意したのは、昨年も押し迫った12月。
ご近所、谷根千界隈をウロウロするうちに、ふと、私って、明治・大正の文豪たちをちゃんと読んでないなぁと思い至る。一方、文豪の街文京区に住んでいるのも何かの縁、図書館には、誰が借りるのかしらと思うぐらい蔵書は豊富。

ということで、谷崎の「細雪」につづく、2冊目は、森鴎外の「雁」だ。

「雁」の物語世界では、パッとした事件など何も起こらない。
東大生かつ美男の岡田が散歩するコースが、無縁坂。暇つぶしに、その坂を通ってぶらぶらと上野のお山や湯島天神あたりへ。
その坂の途中に、東大寮の小使いから、こつこつ金をため高利貸しにのし上がった男を旦那にもつ美しい妻妾のお玉が住んでいて....。現代小説ならば、さしずめ、このふたりの間にコトが起こってドロドロすったもんだ...だろうが、何もおこらない。にくからず思っている二人の仲を邪魔するのは、偶然のたわいない出来ごとで、それを象徴するものが、タイトルにされた「雁」。

しかし、物語は面白い。
お玉が囲われている家の様子とか、それぞれの登場人物の当時の暮らしとか、時代が時代だからこそ物事は遅々とすすまず、それがかえって人々の心象風景を充実させる。
そこが面白いのだ。
今より刺激がずーっと少ない時代だからこそ、創りだすのが可能だった豊かな人間物語だ。

さて、文豪といわれる作家の本は、巻末の資料が充実していて便利でもある。
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この本なら、巻末にある本郷、上野、湯島界隈の、「雁」の物語当時の地図。無縁坂ももちろんある。
消えた町名とか、地下にもぐった川とか、その変化を見るのも面白い。
by tao1007 | 2008-01-16 21:48 | 読書する
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