この作家、近頃ぼんやりしていると、すぐ次の本が出版されている感じがある。図書館でも、前後に予約者がいて、あっさり借りられなくなったし延長もできなくなった。密かに人気ものなのだなと思う。
石田千さんの新作「部屋にて」を読む。
作風がいままでのものとちょっとだけ違う気がしたのは、体調不良の読み手のせいか?
話の筋が、知らないうちに、違う話になっていて、なのにあまり違和感もなく心地よい。
夢の中で本を読んでいるような感じ...。
やはり、ゴホゴホ咳をしながら読んでいるからなのか...もしれない。
そんな感じで読みすすめていたら、熱を出して、うとうとと眠り続けた子供の頃を思い出した。
狭い貸家に4人家族がぎゅうぎゅうに詰まって暮らしていたから、寝室は、朝になると食卓も兼ねた茶の間になる。私が子供の頃は、周りの家もみんなそんな感じに貧乏だったけど、悲惨というより、それが幸せだった時代だ。
とにかくそんなだから、病気の子は、昼間は、「茶の間」で、遠慮がちに眠り続けた。
断続的に目覚めると、母が手仕事をしたり、本を読んだりしている。
それを確認し、安心しててまた眠る...。
夢の中を泳ぐようにいったりきたりして、いつしか熱は下がっている。
いや、私がひ弱に熱だしをしていた頃、母は働いていたから、あれは祖母だったかも...。
そういえば、無き祖母の名前は、この作家と同じく「千」と言う。
私より若い書き手なのに、背負っている歴史が似てるのか。いつも、読後感がこんな感じで懐かしい。