ココロはいつも休暇中



いそうでいないオトコふたりの友情噺が、ああそういえば得意だったんだよな

本屋大賞の「舟を編む」があまりにも素晴らしかったんで、ちょっと間忘れていました。
そういえば、三浦しをんワールドといえば、不思議なたたずまいのオトコふたり=主要人物が得意分野だったかと。

駅伝青春小説「風が強く吹いている」のハイジとカケル、出世作の「まほろ駅前多田便利軒」多田と行天、デビュー作に近いあたりをたどっても古書店を舞台にした「月魚」の主要人物は、古書店当主の真志喜と友人の瀬名垣。

新作「源と政」を紐解いて、まずは、その数多ある不思議なオトコの友情のコトを思い出しました。
これって彼らの続きの人生なんだろうか?
読了すれば、ちょっち違って、いやいや、読者である私の未来でもあるかもしれないなどと思う。老境二人の物語には、あとに続くものへの深い生き方のヒントがちりばめてあったのです。(しかし、作者はまだ37歳。たいした作家さんだとおもいます)
f0108825_16101586.jpg

「源」は源二郎、「政」は国政のことで、つまりこの物語も、また、オトコふたりの友情が柱。しかし、今までと少し違うのが、彼らが73歳のおじい様方だということでしょうか。

源二郎は、戦災孤児から修行を積んで、つまみ簪職人を生業とする。
羽二重という絹の布地で、花や鳥などを意匠して簪とする「つまみ簪」は、江戸時代から続く伝統工芸。芸者さんや舞妓さんなどが日本髪に飾る簪といったらちょっとイメージがわくだろうか。とても細かい作業によって生み出されるとてもとても繊細な工芸品。
...ではあるが、源二郎自身は、どちらかといえば規格外破天荒系。子を授からないまま恋女房に先立たれた天涯孤独な身だけど、もとヤンキーの弟子が、甲斐甲斐しく世話をやき、町内でも人気者である。

一方、政はもと銀行員のリタイア組。こちらは規格内に収まる常識人ではあるが、現役時代に企業戦士をやりすぎて、老境に入って妻子から捨られた。
表面的には正しいオトナなのであるが、ココロは、ひがみややっかみに悩まされえる日々。

彼らは、生まれ落ちたころからの知り合い、幼馴染であって、そして晩年をともに過ごす友。

物語は、彼らのささやかな日常。
人情味あふれる心温か系事件が数々起こり、そこに、ヒトの生き死のコト、家族のコト、ヒトを愛するってことなどなど、深い話の断片がちりばめられる。
ヒトが生きてゆくのに必要なベーシックが、全部そこにくり広がって、泣くとこじゃあないだろココはという展開でほろり涙がこぼれてしまった。

舞台もいい。
「東京の東部にある墨田区Y町は、荒川と隅田川に挟まれ、ちょうど三角州になった地帯だ」とあって、ああ、千住あたりだろうか?と見当をつける。
しかし、その町は、荒川と隅田川をつなぐたくさんの水路が流れ、住民たちは、舟で行き来もするらしい。
民家の庭先には、水路に降りる石段などもあるらしいとか。

ええっ?それってどこどこ?
と、すかさず、地図を眺めてみる。

うーん、そんな情緒あふれる場所は見当たりません。
そこだけ架空?あるいは、暗渠にされた場所を物語では全部、明るい水路に戻してみたということでしょうか?

満々と水をたたえた、素敵な下町の様子が描かれているけれど、ココもフィクションだったみたいです。
でもかつて、現実にあった町なんだろうなぁと思うことにして、本を閉じます。
少し心を熱くしつつ眺めた裏表紙。
f0108825_16521071.jpg
物語の重要な小物である鯛の指輪がおどけた顔を見せていました。

そういえば、装丁も非常に美しい本。
[PR]
by tao1007 | 2013-12-01 15:52 | 読書する
<< 図書館での発掘本!「大誘拐」面... 安土桃山時代が舞台になったとし... >>


カラダもココロも休暇中
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30
カテゴリ
お気に入りブログ
以前の記事
メモ帳
最新のトラックバック
大鳥信仰
from いかさま堺
コムデギャルソン財布
from 財布専科【ブランド財布 長財..
1月24日の朝ご飯(おでん)
from 【ブログ-24日】我が家の朝..
紅白歌合戦 出場歌手が決定!
from 紅白歌合戦 出場歌手
園芸少年 魚住直子
from 粋な提案
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧