ココロはいつも休暇中



ああ、そのことりのブローチが私もほしい!

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かなり久しぶりに、小川洋子さんの物語を読む。

誰も知らない言語を自ら編み出し、その言葉しか離せない兄。
その言語はいつしか「ポーポー語」と呼ばれ、あたかも小鳥の言葉であるかのように描かれる。
その言葉を理解できるのは、ただひとり、その弟だけで、彼は、ボランティアで幼稚園の鳥小屋掃除をするようになって、後に「小鳥の小父さん」と呼ばれるようになる。

ああ、だから「ことり」というタイトルなのかしら?
...いやいや、それもそうだけど、もうひとつの毒のある意味をもって登場もする。でもココにはもちろん書かない。

物語は、その兄弟の穏やかで、ひそやかに淡々と続く生涯の話だ。

そして、執着。
「博士の愛した数式」の博士の数字に対する執着。
「猫を抱いて象と泳ぐ」の主人公リトル・アリョーヒンのチェスに対する執着。
何かに強烈に執着するヒトは今回も健在で、それを受け入れ見守るヒトでなりたつ物語のフレームみたいなモノも、いつもと同じ。
そこがこの作家の作品が好きな点だからこそ、本作もただひたすら物語りの世界に浸るように読み進む。

ところで、誰が何に執着するのって?
もちろん、そんなこともココには書かない。そちらは想像がつきそうだけど。

だって、ここで言ってしまっては、面白くないでしょう?
この作家の物語のは、筋とか話の構成とかではなくて、読者の感じるココロのほうが重要だったりするのです。

さて、兄がずいぶん早くに逝ってしまう。
そして、その兄を見守るように生きてきた弟の孤独な暮らしが愛おしく、そして、穏やかだった暮らしが、少しずつ狂っていく様子に、「あれっ?」と微かに、この作家の変化を思ったりする。

さてさて、もちろん物語世界も十分に面白いのだが、読者が非常に執着したくなったモノがひとつ。

兄が、毎日近所の薬局(かつては雑貨屋)から買って、舐めていた棒付きキャンディー。その包み紙には、「羽を広げ、気持ちよく胸をふくらませ、笑みを浮かべるような表情で空を飛ぶ」鳥のイラストが描かれていて、兄は、それを一枚一枚張り合わせ、厚みのある小さな地層を作り出す。
包み紙は、10色以上。
それらを、「互いの色は互いを邪魔せず、元々は十を超える種類の色だったことを忘れさせるくらいに調和して、新たな一つの色合いを生み出していた。」
...というぐらい、それは美しい地層だ。

そして、兄は、そこから鳥のカタチをたくみに切り出し、後ろに接着剤で安全ピンをつけブローチに。

ああ、このブローチが欲しい!

「博士の...」のときは、すっかり数学の面白さはまり、それ関連の本を読みあさる羽目になった。
「猫を抱いて...」のときは、本物のチェスを見たくて、百貨店あたりを探してみたり、美術館や博物館にいけば、一応、チェスの展示がないか確認...なんてことに。
その前のこの作家の物語でも、いろいろ似たような羽目に陥った記憶も多数。

まったくこの作家といったら、読者にまで執着の種を植えてくれるもんで、ああ、今度は特殊な作り方のブローチかよぉ...。

それでも、その執着の種は、必ず芽吹き、ささやかながらも収穫に結びつくもんだから、今回もきっと...と。
ってことで、しばし、そのブローチのことを頭の片隅にぶら下げながら暮らすのだろうね(笑)。

ちなみに、その棒つきキャンディーの名こそ「ポーポーキャンディ」という。
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by tao1007 | 2013-02-01 15:46 | 読書する
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カラダもココロも休暇中
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