ココロはいつも休暇中



大きな大きなものを編んだヒトたちの数年分

読みたい本は図書館で借り⇒面白かったら感謝して買う。
...という、私個人の本読みのルール。
図書館の蔵書が少ないということもあって、長々と待っていると中身が古くなってしまうビジネス書に関しては、このルール外でもあるが、小説などは固くこれを守っている。

...なあんて嘘!
三浦しをん作「舟を編む」は、都合2冊も買ってしまった。
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1冊目は、帰省の友として買い。未読のまま実家に忘れ、続きが気になりすぎるので、再度購入。
といっても2冊目は、古本で購入したので、まあいいか...と自分をやや甘やかす。

物語は、辞書を編集する人々の話。
私も編集者の端くれなので、「編集者」が主人公だったり、出版社が舞台だったりする物語には並々ならぬ興味があって、必ず読む。
が、おおむねそれは、ただの設定だったり、モチーフだったり。
しかも、そうゆう扱いであっても、かなり勘違いの捉え方が時々。

実際、これまで編集者の本質を物語りにしたものってあっただろうか?
いや、なかったな。

本書を読了して、自信を持ってそう断言。
...っていってもココロの中でこっそりとだけど。

「編集する」ということにストレートにテーマを定め、それに従事する人々の熱意、情熱、落胆、混迷、喜び、悲しみ...を、それこそ編むように丁寧に書ききった。

しかもそうして編集されたものは、質実ともに巨大な「辞書」というのも象徴的。
地味だが、その存在のゆるぎなさは、どんな書物にも変えがたく。多くの言葉を載せて、人々の言葉の海を行く大いなるよりどころ。
出版社から出される本たちの、長老のような存在といってもいいだろうか。

言葉というのは生き物で、日々新陳代謝を行っている。
辞書に関わる編集者たちは、それを、追うかのように、毎日新しい言葉を見つけてはコツコツとメモをとり、その意味とするところなどを記した記録カードを作る。
そして、その束から、今と未来にもっとも必要な言葉を選ぶ。
そして、それらひとつひとつの言葉に対してつける、ニュートラルで簡潔な解説文をつける。
時にそのジャンルの権威と言われる学者にその解説を依頼するべく、彼らと付き合い(というかお守?みたいなこともして...)。
やがて、それらが組まれ少しずつ印刷されたものが出来上がってくれば、それを、赤ペンもってまたコツコツと確認をする。

書物を編むというのは、その中身もさることながら、外側にもココロを砕く。
たとえば、長い年月をかけて、辞書にもっとも適した紙を作ったり、
美しいたたずまいづくりのために、しかるべきデザイナーへ装丁を依頼したり。

そして、その日々は十数年。
...そんなことが延々とつづく。

このシゴトを体験したことがなければ、それはもうただの地味と退屈の日々にもみえるだろうが、曲がりなりにも長く編集者というシゴトをしてきた身には、その楽しさが分かる。

それは、美しい城を作るためにレンガを積むとか、ココロに風が通る穏やかな森を描いて荒地に苗木を植えるとか。
あるいは、まさに大海を、嵐も海賊すらもものともせずに突き進む強く巨大な舟を作ることに似ているのかもしれない。
つまり、大きな目標に、毎日少しずつ確実に近づいている楽しさ。

編集者というシゴトは、そんな、今まで無かった何か素晴らしいモノへの出会いに少しずつ近づいてゆく幸福感みたいなものを抱えているんだなぁ...と改めて思い。
思ってちょっと涙が出た。

ともかく、本を編集というテーマに関して、ここまで踏み込み描かれた物語なんてのは今まで無かったように思うが、それが、本屋さんがいちばん売りたい「本屋大賞」の本になったなんて、ちょっとすごくない?

それは、コツコツ諦めずに成し遂げる、すべてのシゴトのありかたを描いた本でもあるからなのかもな...と、落ち着いて考えたら、そんな答えが降って来た。
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by tao1007 | 2012-07-07 14:45 | 読書する
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