県のためにいろいろ実績を残しつつ、国家権力に嵌められたらしい前福島県知事のその嵌められた経緯をまとめた著書と、今をときめく古賀茂明氏による...言ってしまえば日本国政府と官僚政治の暴露本。
この2冊が、近所の本屋に仲良く並び、そうゆうことなら読んでやろうかと手にとってみる。
まずは
、「知事抹殺 つくられた福島県汚職事件」佐藤栄佐久 平凡社から。
前半、佐藤氏が知事選に勝利するあたりとか、その後、県政でいろいろ活躍する部分は、素人には、自慢げにも思え、よくある政治家の著書の雰囲気からあまりはみ出ない。なんだかちょっと鼻につくなぁ。...っていうか「抹殺って」このタイトルちょっとすごすぎない?とか思いながらページをめくる。
しかし、実際のところ、実家のある福島で、この知事さんは人気があった。
それが、確かにここに書かれる収賄事件の発生後、我が老母及びその友人おばちゃんたちの間でも、一転して「いい人だと思ってたけど、影でそんな金儲けしてたんだ」と評価が変わった。
それは、ずいぶんはっきりした記憶だから、たぶん何回も聞かされたんだろうと思う。ということは、県内では、相当な騒ぎになったということだ。
確かに、県民の気持ちの中ではこの知事は抹殺された...のかもしれないなぁ...と。それでも、まだこの辺まではぼんやりと読みすすむ。
が、後半。
その巻き起こった事件のことがかなり詳細に描かれはじめると雰囲気は一転。
まず、収賄の主犯ではないかとマスコミが騒ぎ始め、騒ぎの責任を取って知事を辞任。その後、さらに騒ぎは加熱して...とその経緯には、日本のマスコミのいやらしさをまず垣間見る。
著者は、これはなんだなんだと思っているうち東京地検に(素人目には)まるで拉致監禁されるようにしょっ引かれ東京拘置所に収監、翌日から、検事による取調べが始まった。
取調べは、検事の作ったストーリーに当てはめてゆく作業にしか見えないし、なのに、被疑者は、徐々に心理戦に取り込まれ負けてゆく。たったひとりにされて、情報からも遮断され、人道的でない言葉を投げかけられて、不利なことのみ吹き込まれるのだから当たり前...もし、同じ環境に置かれたら...と考えるだに恐ろしく。恐ろしがりながら読みすすむ。
冷静に考えてみれば、ここに描かれている検事の取調べは、TVで見る暴力刑事の取調べより静かだか怖い。
そして裁判。
確たる証拠は出てこないまま、誹謗中傷的な検事の尋問、偽証に手を貸しているとしか思えない証人のが発言。
ああ、やだやだ...と思いつつも、これって、その後起こった事件...たとえば、厚生労働省の局長村木厚子氏の冤罪事件とそっくりじゃん!...と。
違うのは、村木氏は、無罪を勝ち取れたものの、佐藤氏は最後まで証拠も無く、裁判所ですらそれを認めているふしがあるというのに、なぜか執行猶予付きの有罪となってしまったということ。
書中には、「裁判官が検事に気を使って、実質無罪、言葉だけ有罪」になった的なことが書かれてもいて、驚く。
国家権力は、そんなこそくなことまでするんだ!
この本。当事者本人によってかかれたものだし、そのひとは、海千山千の政治家でもある。むろん気分的には、疑うスタンスをどこかにもちつつ読了...なのだが、素朴な感想としては、知事在任中に福島の原発問題をはじめ頑張りすぎたんで嵌められた...ってことですか?とそんな風。
なんかちょっと目立つひとがそこにいて検事たちに目をつけられたなら、その「優秀な頭脳」を使って不当な嫌がらせをしているようにも見えてきた。
正しく使えよその能力。
この話は、できれば、ほかの国のお話、あるいは良く出来たフィクションと思いたい。
しかし、実際に私たちの身の回りでまことしやかに起こっている話。しかも、それを支えている資金は、紛れも無く私たちが有無を言わさず徴収される税金なんですよぉ。
ああ、いい加減にしてほしいです。
そして、ついで古賀茂明氏の「日本中枢の崩壊」を読みはじめ、もう冒頭から根本的には同じコトだらけで暗澹とする。こちらは、もう腐っているかも...と思って止まない官僚機構の中にかつていて、自ら飛び出してきたひとの話なもんで、もっとずっとリアルです。
...ということで、読みきりましたらまたこのブログにて。