ココロはいつも休暇中



この本のイタリアは静かで切なく、しかし味わい深く

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「ジーノの家―イタリア10景」内田洋子 文芸春秋

最初この本に出会ったのはいつごろだろう。

かなり大きな書店の、派手な装丁の色の海で、この本だけかえって目立っていた。淡いブルーにタイトルの黒、帯にまでもおなじ色を使い、ともかく潔くとてもシンプル。
しかし、平台の山から一冊手にとってみて、まず本の手触りのよさにとても惹かれた。
書店に出向いて、見つけて、触って、本の洪水の中で、その中のたった1冊とかすかな縁を感じるのはこうゆう時。
そして、数ページめくって目次を眺める。

黒いミラノ
リグリアで北斎に会う
僕とタンゴを踊ってくれたら
黒猫クラブ
ジーノの家
犬の身代金
サボテンに恋して
初めてで最後のコーヒー
私がポッジに住んだ訳
船との別れ

ああ、なんか美しい言葉がいざなっているよ、もうこの本をここにおいて立ち去れないではないか...。
それでも、そこは静かに我慢して立ち去り、けっきょく忘れがたくなった。
のちに買おうと決意しても、駅ビルの中の書店とか、中型の書店にはまったくなくて、そうなれば、恋焦がれるような気分にもなって、毎日考えるのはこの本の静かなたたずまいのことばかり。
そして、やっと、ご近所の書店往来堂にひっそりとあるのを発見し、なあんだ、最初からここにくればよかったのに...。

ああ、よかったという気持ちになって読み、夢中になる。

黒いミラノは、いきなり「ミラノの暗黒街」の話。
リグリアでは、ほんとうに葛飾北斎が乗り移ったかもしれないような老人と出会い。郊外のダンスホールは、屋外の畑の上に即席。
そこにダンスホール荒らしは、現れた元神父とブラジルから逃亡を果たした信者の男のカップルで、情熱的なダンスであたりのすべてを魅了する。
黒猫は日本の「除災招福」の信仰を知ったイタリア人の大学教授の提案から、クラブに冠する名前となる。で、そのクラブは、火事という一難を乗り越えたアパートの住民たち。
そして、ジーノの家の家主のジーノの切ない人生話。

いや、そこに登場するイタリアの普通のひとびととされる人の人生は、みな切々と胸に響く悲しみの物語をはらみ、しかし、深くいとおしい。
そして、一章読む終わるたび、これらは本当に実話なの...と、今読んだ物語を、不思議な伝承のように思い返してかみしめる。

原色で情熱的で、喜怒哀楽が豊かな...。
この10章からなる物語は、そんな、イタリアのステロタイプから遠く離れた、静かに現実を受け入れ淡々と生きるイタリア人たちの話。
でも、出会えてよかったとココロから思える話でもあって、あの日書店へいかなかったらまだまだ知らなかったかもなぁ...。

しかし、同じくいちいち、ジーンと熱した日本人は多かったんだろう。今年、本書は名だたるエッセイ賞を受賞し、なんだか一挙に目立つ場所に並べられるようになったようです。

普通のイタリア人の、静かで味ある話は、もっとこれから多くの人のココロをジーンと揺らすんだろうね。
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by tao1007 | 2011-07-23 23:29 | 読書する
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