よーくみないと気がつかないほど小さいあつかいだけれど、たぶん「チョコレート・ストーリーズ」って言葉に惹かれたんだと思う。
あるいは、あのころアン・タイラーの本に嵌っていたからその訳者、中野恵津子氏つながりで興味を持ったんだろうか。
...あいかわらず、静かに積読されたままなっていた本を眺めてつつ過去を検証している私だ。
この「まごころの贈りもの」。
初版は1999年12月で、当時在籍していた会社は、けっこう景気がよくてボーナスも給料も頂点だったはず。しかし、給料に比例してひたすら忙しかったから、ほぼストレス解消で本を買ってた頃だな...と思い至る。
しかし、そのほかには、何を考えていたかとか何をしていたかとか...思い返してみてもあまり覚えていなかったりもして、そんなときに読んでもたぶん今のように読めなかっただろうな...と、これは確信。
約10年後の今日、そんな風に思いながら読了。
アメリカに住む様々な立場・職業の女性の寄稿文は、どれもささやかだけれど希望あるストーリーで、「チョコレート」というより、「グラス一杯の美味しい水」を静かに差し出されているような...そんなイメージが似つかわしい。
苦難に直面して苦しんだり、自分のキャパシティより大きい課題の前で立ち止まって悩んだり、人生のハードルは誰にも平等にそのひとなりに用意されている。
しかし、それを、どちらへ向かってどう乗り越えるかは千差万別。
チョコレートストーリーズに寄稿した女性たちは、だれもが、そのハードルを鮮やかに乗り越えた。だから、50話あるお話は、どれもが静かなエネルギーに満ちている。
その一篇を書き、編者もつとめたアン・アレンボーという女性は、「書く」ということとは縁がない人事関係の仕事をしていたある日、突然女性のための本を書くことを思い立った。
こつこつといろいろな女性に寄稿を依頼しつづけ淡々と纏め上げること約2年。出版社に持ち込み、現地アメリカでは1997年に出版された。
そして、すぐにベストセラーを記録したのだという。
しかし10年たとうとする今、日本では絶版。
本国アメリカでは...?と、あとがきにあった、当時、編者の主宰していたwebサイト「chocolate for women」を検索してみれば、アン・アレンボー氏は作家&アーティストとして活躍中のようで、ちょっと安心したりした。
さて、昨日のポール・セロー氏の本は改訳版なら新刊が買えるし旧版ともに近所の図書館でも借りられるけど、こちらの本はなんと!都内のどの図書館の蔵書にもなっていない。
手放していいのだろうか...と一瞬思うが、きりがない。
私の本棚を離れれば、少なくとも、知らない誰かがこの本を読む...という可能性が生まれるだろう。
多忙を理由に、ストレス解消の手段のように集め、カオスとなった我が本棚から本を自由に。
そして、モノを持たない私も自由に。
ちなみに、本を読む。本を探す。小さな本棚を作る。
...そんな感じのコトが仕事にならないだろうか...。と、思いつく。
これは、アン・アレンボー氏のターニングポイントでもあったこの本の私なりの読後感...もどき(笑)。
単なる思い付きの夢物語ではありますが、自分にとって、コレは何かの細い小さな糸口なのかもしれません。