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ココロはいつも休暇中



15分の名作

毎度、NHK連続ドラマ「ちりとてちん」のお話で重ねて恐縮です。

15分の名作_f0108825_233540.jpg
先週末、ドラマの世界では、平成12年エプリルフール。その日、ヒロイン喜代美の師匠・徒然亭草若は逝って、その道行を描いた15分は本当に傑作、涙した。

あけて、本日の通夜のシーン、今度は名作といって差し支えない。
今度は、思いっきり笑った月曜の朝。
そして、庶民の日常生活を得意とする監督...たとえば、小津安二郎とか山田洋次とかの作品に通じるものも感じ...たのだがどうだろう。

京本正樹演じる、ヒロインの伯父・小次郎おじさんは、40歳すぎても無職のフウテンで、せっせと宝くじを買う日々。(ちなみに、このひと、私の好きな、山田洋次監督作「フーテンの寅さん」みたいだ...。渥美清さんの個性的なお顔に比べたら、ルックスちょっと良すぎだけどね。)

草若師匠が、病院見舞いに来た小次郎さんに
「私も、一枚、買うといてもらおかなぁ。小次郎はんに買うてもろたら、何や当たりそうやな」
で、「はぁ~!ほな早速一枚、買うてきますわ。」ってな具合の数日前の放送分。
そのくじが、重要な小道具となった今日。
ほんとうに丁寧に伏線を張られたドラマだと思うことしきり。

おなじみの登場人物が、喪服にて勢ぞろいのしめやかなシーンに、小次郎おじさんが騒がしく乱入。
手には古い新聞紙を持ち、「大事なことを思い出したんや。師匠に頼まれて買うた、宝くじの、当選発表やな~」とか、あたりの空気をまったく読んでない。
けれど、「もし、当たりくじやったら、今のうちに師匠に教えてあげたいやろ?」ってとこが、悲しくて、おかしい...ココロをぐぐいっとつかまれる。

座敷の奥では、弔問の名人噺家にお悔やみ言われて弟子はしんみり...。

対し、その手前縁側にて、小次郎さんは、さらに独走。
「あっ!何か降りてきた!喜代美。ちょっと手伝ってくれるこ~。何や、当たる~。当たるような気がすんのや」とか言っちゃって、やっぱ、寅さんそのものだなぁ...なんて。

しめやかさもそっちのけ、おじちゃんは新聞の番号、喜代美は、くじの番号と、当選番号を上から順に読み合わせがはじまった。

組数は...合ってる。
上1桁目...もちろんあってる。
上2桁目...も合っていた。

「それ当たったらどねする気ぃ~や」
「は、そら当たったら、棺桶に一緒に入れたるわな」
数人が気になって寄ってきた。喜代美の弟、母、祖母...父。

上3桁目...もなんと合ってる。

「あと、3桁いうことけ」
「は~ん。あと3桁合おとったら、一億円や!」
「一億!?」

と、弔問客がまた数人興味を示して...。
「それ、ホンマに当たったら棺桶入れんのですか」
「そら、まあ。なぁ・・」
「一億灰にするつもりですか」
「う~ん」
「そやけど、三途の川渡るときに、渡し賃かかるう言うて、落語でも言うとんなったもんね~」
「そやそや。草若さんに、成仏してもらうためにも、入れといた方がええわ」

「えっ!いえいえいえ。 お金燃やすようなことしたら、かえってバチがあたります」
対し、「そうや!よ~う言うた!」と、思わず言ったのは、故草若と並ぶ四天王噺家のひとり、柳宝師匠。

つまり、みんな、当たる気満々になって来て...。

「けど、それやったら渡し賃が」と返すと、
「偽金入れといたらええがなぁ」とこちらは、やはり四天王・尊徳師匠。

バックミュージックは、M. ラヴェル作曲「ボレロ」風。

「いや、師匠。落語のネタやないんですから」

...ふふふふ、もう見てるこっちは、ここらから笑っているばかしだ。

全員が喜代美と小次郎おじちゃんの周りに集まって、あと3桁。

結局、最後の1桁が2番違いで、前後賞もなし...ってのが落ちなんですけどね。

数奇屋造り風の粋な草若亭は、庭に張り出した縁側が劇中舞台のようで、今日は、そこにすべての登場人物を集め、TVのフレームの中にバランスよく収まった。

一同大笑い!!

「えらいもんですなぁ。 草若師匠、亡くなっても、人を笑わすんですさけ」
「草若、日本一ぃ~!」

ドラマの世界では、草若師匠は、上方落語の四天王と呼ばれた名人で、残された3人の師匠は何を押しても弔問に訪れるは道理。重ねて落語家の矜持かしゃれか、「みなでゆてたんや。ひとりが死んだらその葬式でかならず悔やみのネタやってみなを笑わすゆうてなぁ。」とか打ち合わせていたらしい。

しかし、「やっぱり、あかんな。そんなことできるかいな。」と、柳宝師匠に涙ながらに言わせていたのが本日の冒頭シーン。

送る生者より、送られる死者のほうが突き抜けている。
「悔やみのネタやってみなを笑わせた」のは、葬式の主役である徒然亭草若だったのでした。
という、さらに大きな落ちもつく。

見事です。

計算尽くされて、しかも登場人物すべてに愛ある脚本。
その話に魅せられて、魂を入れる役者たち。カメラワークも演出も素晴らしい。

「ひとつのプロジェクトを結実させたかったら、そのメンバーは、すべて同じくらい高い志と熱意と実力があるべきだ」と、かつて取材先の方から聞いて、私の座右に置く言葉を思い出だした。

これは、そうやって創られたドラマにちがいなく、TVのこちら側の何万人もの視聴者をも巻きこんで「名作」として結実した...と、やっぱり、思ってしまう...月曜日。

朝から、エネルギー使い果たしたのにも関わらず、こうして、ブログ書くため、また何回も録画を見直している。ここまで巻き込まれたことって...ないかもしれないなぁ...。
何か真剣にアホになってます。私。
by tao1007 | 2008-02-18 23:13 | ドラマとか映画とか
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by tao1007
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