この本の原題を超意訳して、「このつまらない仕事を辞めたら、僕の人生は変わるのだろうか?」 というタイトルをつけた、そのひとは、すごくやり手なんだと思う。
私が、この400ページ以上もある分厚い本に興味を持った理由は、もちろんこのタイトルだもの。
多くの読者もそうなんじゃあないの?
でも、中身はもちろん原題の「What Should I Do with My Life?」をテーマに50人ものひとに、インタビューという手法で寄り添ったノンフェクション。
もちろん、題された疑問に対しての答は、明確には一行も書かれていない。
しかし、私にとっては、アメリカに住む、さまざまな年齢のさまざまな立場のひとが、自分の生き方を探し続けている様子が興味深い。
人生の半ばあたりに来て、まだ何をすべきか探している私って...と時々悩まないでもないこのごろだから、このインタビューされたひとの中に私よりさらに生きた人もいて、まだ「何をすべきなのか?」と悩んでいる、しかし、彼らはみな自分に真摯な人たち...と読み取って勇気をもらう。
この本を読んでいたら、私の尊敬する作家・長田弘の「猫がゆく サラダの日々」という本の中の言葉を思い出した。
「(主人公の)ジュジュは、仕事と労働とをきっぱりと区別していました。仕事は、してたのしいことをすることで、労働は、それをしなければどうにもやってゆけないことをすることでした。」
この本を始めて読んだのは、社会人になったばかりの4月だったと思う。
会社訪問やら面接やらで言われたほど、会社は「仕事に対して厳しくなく」、しかし「しがらみとか世間体とかくだらないことに対しては厳しい」場所。
「不合理で無駄の多い」仕事...いや労働の進め方。そして、それらがわかってしまうクールで小生意気な新入社員の私。まだ何も解決できない未熟さにいらいらしながら早々に自分探しを開始した。そして、それから、ずーっと「労働」ではなく「あるべき自分の仕事」を探し続けていたりする。
最近、私の会社での扱いを気の毒に思ったのか、「辞めてやる!」と思ったことはないの?と問うたひとがいた。
「あと少し頑張って、きっぱり辞めたいと思っています」と応えたものの、問うたひとは少し酔っていらっしゃるようで、「自分はお話したい」けれど、私の話は聞いていない。
「思わないことはないけれど、私は逃げたいのではなく、変わりたいのだから...」と続きはこころの中で言ってみた。
この本のタイトルに沿って言えば、「いまのつまらない仕事」を「つまらない」と思ったまま辞めても人生は絶対変わらない。
そして最近、少なくとも「つまらない仕事」はしていないと自負している私がいることに気がついた。
卒業の日は近い。