神田川の源流は、井の頭公園・井の頭池にある。古川日出男作「サマーバケーションEP」は神田川を源流から、隅田川に合流し、東京湾に注ぎ込むまでを、延々と川に沿って歩く物語だ。
何を隠そう、私は10数年前に、神田川が隅田川に合流する浅草橋まで、同じことをひとりで実行したことがある。ただし、井の頭池から自転車で高田馬場付近まで行き、後日、そこから浅草橋まで歩くというもの。逆に、屋形船を貸しきったイベントで、隅田川から神田川を御茶ノ水橋あたりまで上ってきたこともあった。どちらも東京に住み始めたばかりの頃で、私なりに「東京にしかない東京らしさ」を探して遊んでいた...のだと思う。当時私は、タウン誌の仕事をしていて、そこで出逢った人々の多くは遊んでいるのか仕事をしているのかいささか不明、という人たちが多く。その人たちにただ黙って着いていけば、必ず面白いことに行き当たった。そんなtao的黄金時代で、そのひとつひとつが、今の私に少なからず影響を与えているとはっきり言える。
歩く速度で街を見る面白さ。下から上から仔細に眺め、あるいは隙間から覗いて街の素顔を探す方法が東京という街にはぴったりくる。お金はなくても、体力と気力とアイデアは豊富にあって、何でも真剣に遊びに変えてしまう稀有な大人の集団の中に私はいたな。と今にして思う。みんな地方出身者だったから、東京が大きなおもちゃ箱であるかのように見えていたのかもしれない。
川といえば、目黒川を河口から上流まで歩って、その模様をビデオに撮ったひともいて、それを交換日記風に、もう一人の友人とやり取りしていたこともふと思い出した。後日そのビデオの上映会があり、記憶をたどれば延々24時間分ぐらいあったんじゃなかったっけ...。
さて、古川日出男氏は、神田川ロングウォークという物語のモチーフをどこから見つけたのかしら?ともかく、絶対作家自ら歩いて取材したと確信できるリアリティで、地図を片手にお読みになることをお勧めしたい本。水再生センターがある落合中央公園~江戸川公園あたりまでなら、実際に歩くのも楽しいかもよ。
そういえば、先月参加した中仙道ロングウォークもそんな感じかと思ってみる。...ひとことで言えば「真剣な遊び」。なんて言ったら怒られるかしら?