一昨年より続いている某百貨店の通販誌の仕事の取材で、ある絹製品の話を聞きに行く。今回は「繭紬の傘」と日本の伝統柄を若いデザイナーにアレンジさせたシルクスカーフの話。
「繭紬」とは、シルクの傘を張るために考案されたともいわれる、堅牢で粋な絹の織地。一枚布なのに表側は無地で裏は縞という不思議な布だ。その巧みさに日本の職人のDNAが感じられるが、もう日本で(と言うことは世界で...)この絹地を織れるところは限られている。どちらの商品もシンプルでありながらファッショナブルで、値段も高くない。加えてその背景にある物語がいちいち面白く、編集者としては、紹介し甲斐のある商品なのだが、そう売れないまま今日に至る。
シルクの傘とスカーフ....うーん。強烈な何かがなければ日常生活では不要のものだからその物語を楽しんでも、「買う」という行為に結びつかせるのはやっぱり難しいか...。これらが、仮にエルメスの商品だったら...この3倍の価格で、充分な売れ方をするだろうなぁ。と禁句の台詞を頭の中で密かに思う。
開国のころ、生糸で軍艦の資金を稼いでいた日本だから、絹は日本のお家芸。フランスの博物館には、そのころ日本から輸入した絹製品がコレクションされていて、たぶんメゾンといわれる老舗ブランドも日本の製品から多くのことを学んだはずだ。エルメスにあって、この素晴らしき日本の絹メーカーにないもの...それは「ブランドのチカラ」なんだよなぁ...。
ブランドを創る...日本のモノつくりにかけているもう一つのこと。
私は、大きな課題の前で、ひとしれずため息をついている感じ。