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ココロはいつも休暇中



いちばん大切な時間

いちばん大切な時間_f0108825_21222020.jpg椰月美智子著「しづかな日々」。ひとことで言ってしまえば、魅了されたというのが近い。
この本の帯には確か「男の子はこうして大人になる...」と書かれてあったかと思うが、これは、子供が大人になるための大切な時間の話だ。

小学5年生の男の子・エダイチの夏休み。
物語は、彼と彼のおじいさんとのふたり暮らしのごく一部の話でしかない。が、私は、このワンクッションおいた、ほどよい距離感がそもそも好きだから期待は大きかった。さらに、この「夏休み」という単語も私を日々魅了する言葉だし。
...宿題はあるものの、1ヶ月以上自分の裁量で使ってよい自由な時間。考えただけでわくわくするよね。

ぺットボトルではなく前の日から煮出した麦茶。
麦藁帽子をかぶって乾いた庭木にホースで水をまく。
朝のラジオ体操とはんこを押してもらうカード。
友達と自転車で遠出するちいさくて大きな冒険。
井戸水とガス釜で炊く白いごはん、かつお昆布でとる深い味のだし。
おじいさんの大きな手で握られた顔の半分もありそうなおにぎり。

畳の香りもする座敷と広い庭を繋ぐ縁側。
そこは、ひさしが大きく長くはっていて真夏の日差しはとどかないし、風通しも良くて、ひんやり気持ちいい。
「うちと違ってここで食うとなんだかすっげえうまい気がする。なんでだろう」って、友人のオシノがエダイチにいう台詞が効いていた。
「なあ、エダイチ。縁側ってさ、なんにでも使えるんだな。昼寝するにもいいし、昼飯くうのにもいいし、ぐだぐだするのにもいいしさ」と続く。エダイチもココロの中で思う「ぼくもおじいさんの家に越してきてから本当にそう感じていた」って。
私も同感だ。
なんで、そんな生活がなくなっちゃったんだろうね...。

おじいさんが漬けたぬか漬けの野菜を熱いお茶でポリポリ食べる男の子たちのシーンがあった。エダイチのともだちにおじいさんが振舞ったおやつなのだが、その後、その漬物が食べたくて少年たちがその家に何かと集まってくるのがおもしろい。食べ盛りが遠慮なく完食したから、おじいさんが明日の朝食の分を慌ててつけるシーンまであって笑った。
おじいさんの食事は、白いごはんと味噌汁、梅干に漬物が基本なのだ。

夏休みの日常...なんでコドモにはあってオトナには無いのだろうね...。様々な発見があって、ココロの栄養をたっぷり摂取するような日々が、いまも欲しいなぁ...。なんて。

でも、私のコドモ時代にも確かにそんな時間はあった。と、自分に与えられた大切な時間の存在に深く感謝してみるのだ。
だから曲がりなりにも今オトナをやってられるのだと。
by tao1007 | 2007-03-29 21:20 | 読書する
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カラダもココロも休暇中

by tao1007
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