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制限のないコムデギャルソン

f0108825_23285770.jpg「アンリミテッド:コム デ ギャルソン」平凡社

数年前、NHKスペシャルでコムデギャルソンのドキュメンタリーをやっていてびっくりした記憶がある。しかし、それは見るに値する面白い番組だった。再放送を見たのち、友人からビデオを借りて再々度見たからかなり記憶に鮮明に残っている。
ある年のコレクションをいちばん最初から丁寧に追ったつくりで、このブランドの非常にユニークな服つくりを私はこの番組で初めて知った。
最初、川久保玲氏が考える今年のコレクションのテーマについて語られ、スタッフ、主にパタンナーたちがそれをイマジネイトしながら解釈し、服の「形」を作り上げてゆく。川久保玲はコムデギャルソンのデザイナーだが、デザイン画は描かない。絵型も無い。
そこにあるのは語られた言葉だけだ。
このブランドはギャバをはじめとするウール類や綿、シルクといったベーシックな自然素材の布地も使うが、素材自体の開発も得意とするところ。しかし、デザイン画が無いように、パターンをつくりはじめる時点で布地素材も存在しない。番組では、パターンと同時進行で川久保氏がコレクションのテーマにあった素材を工場に発注していた。しかし、ここでもまた「スチールのようなしなやかな強さ」とか言うような「言葉」でしか語られていない。...ついて行くのは大変だろう。

その素材は、パターンが完成した後、川久保氏によって組み合わせが決められる。以前、その時点では「俺のパターンが...」とパタンナー自身は不満に思い絶句することもあるのだとお店のスタッフの方に聞いたことがある。しかし、結局、服が完成したとき、その大胆さに誰もが納得するのだとか。

川久保玲氏の凄さは、創られた服のデザインにあるというより、その過程=集団でのモノ創りの仕方を考えだし、それはどこにも存在しなかったやり方で、かつ、それを実行し続けていることにあるのだと思う。
ひとりの力や考え方で創られるわけでは無いからこそ、いつも新しいものが生み出されるといえるのだ。しかし、その共同作業は”話し合って”という生易しいものではなく、モノを創る過程で、すべてをさらしあっているかのようだ。
私だって編集者として、モノつくりの端っこにいる人間だ。こういった現場に加わる苦しさは容易に想像できる。そして、ここでの仕事をきちんとやり遂げたひとを、私は無条件で信用できるような気もする。

そのNHKのTV番組とコンセプトを同じく編集された本「アンリミテッド・コムデギャルソン」という本を見つけた。
紙面では、ジャン・ポール・ゴルチェやダナ・キャランなどの名の知れたデザイナーや博物館のキュレーター、ディレクター、ファッション界のエディターやジャーナリストなどがこぞってコムデギャルソンを淡々と褒め殺している。そのあいまあいまに川久保玲氏もまた淡々と語る。その組み合わせがおかしくもある。
...良く考えれば、単なる服の話だ。それがクリエイティブだったり新しくなくても、実は多くの人は困らないはずだ。それに対して、みなこのように真剣になってしまう不思議。

コムデギャルソンのコレクションは、「服」というより「アート」に近いから、私はそれを日常的に着ることはない。
服として着ているのは同じブランドの違うラインだ。
一般的に「アート」を鑑賞するとき、楽しく生きるためのヒントを探している私。「生活のネタ」として具体的に楽しむ場合ももちろんあるが、自由に何かを作る大変さだったり、昔からある伝統のようなものを繋ぐのに必要なクリエイティブ力だったり、そんな「人生の肥やし」のようにとらえる場合も多い。
コムデギャルソンの服を好む気持ちの中にはこれと同じ姿勢があるのかもしれない。
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by tao1007 | 2006-11-06 15:58 | 読書する
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