「葉書でドナルド・エヴァンズに」という本が図書館に着た。
詩人の言葉はあまりにたくみで美しく、ひとことひとこと丁寧に読み進む。
1985年11月25日アイオアシティからほぼ毎日1通ずつ、もうこの世界から逝ってしまった画家のドナルド・エヴァンスに宛てた葉書。
それは、アイオアシティから始まってアメリカ大陸を列車で行ったりきたりの旅の記録でもある。
訪ねたのは、アイオアシティ⇒シカゴ⇒ボストン⇒ニューヨーク⇒モリスタウン⇒フィラデルフィア⇒ワシントン⇒ボルティモア⇒アレクサンドリア⇒ニューオーリンズ⇒ヒューストン⇒テキサス、ニューメキシコ、アリゾナと夜行列車で通過⇒フェニックス⇒ハリウッド⇒ロサンジェルス⇒シアトル⇒サンフランシスコとなる。ノースウエスト機でアメリカを離れたのは86年の1月21日。2ヶ月もかけてなお、駆け足のたび。アメリカは広い。
「ぼくはいま、旅たったばかりです。世界はまるで違っていて、ぼくにはなにもわからないのです。」----旅の最後の葉書は、ドナルド・エヴァンスが生前、友人に宛てた手紙に書かれたなぞの言葉で結ばれている。
その意味の正確なところはわかるはずも無い。
でも、清々しいほどに孤独だけれど、ずーっと先まで希望ある未来。
そんなことを勝手に感じて泣いてしまった。
次に、葉書は1987年に東京から、88年にはオランダのアムステルダム、アクテルデイク、ユトレヒトから、そして、ベルリンやロンドンなどほかの国にも足を伸ばしそこからも投函される。
しかし、もったいなくてまだ読んでいない。
膨大なストーリーが横たわる長編物語でなくとも、ずーっと読みきれない本。たとえば、1日に同じ場所を3回読んで、その3回ともまったく違った印象を受ける。
そんな本に、私は初めてであったかもしれない。