取材にて、日本橋のFという会社を訪問。
毛織物、ことにカシミアでは知るひとぞ知る会社だ。
カシミアの話を聞く。
いろいろ専門的な話が展開された。
なかでも、いちばん私の気持ちを捕らえたのは、
カシミアは一頭のヤギから1年に150gしか取れないということ。
150g...小さなマフラー1枚ぐらいの量か。
そして、ヤギ1頭からその毛を採取できるのはたった5年。
単純計算して、たった750gだ。
すかさず、セーターの作り方の本をチェックする。
この量では小ぶりのシンプルなセーターを作るのがやっとではないか。
ヤギ1頭の生涯で小さなセーター1枚...。
さらに...。
★ヤギは、子供をあまり産まない。1回のお産でやっと1頭。
★寒暖の差が激しいところでないと一番上質なカシミアになる産毛は生えない。
その条件に当てはまり、かつヤギも快適に過ごせる場所は中国の特定の場所に限られる。
だから、中国でしか高級カシミアの原毛は産出できない。
★しかし、ヤギの放牧は、中国の砂漠化を加速する一要因でもあるため
中国のカシミア産出量が減ることはあっても増えることはない。
(まさに、本日の夜のニュースで、中国の砂漠化の話報道していました。
6年ぶりの大型の黄砂が。東京にも影響があるとか。)
★さらに、羊の毛を刈るようにヤギの毛を刈るとヤギはたちまち風邪を引いてしまうので原毛採取にもことのほか手がかかる。
(結構難しい話なのだが、そもそも話の入り口が「高級カシミア」であるため
砂にしみる水のようにどんどん知識が吸収されるよ。)
希少なヤギは大切に育てられ、カシミアはそこからやさしく採取され、
そして、日本のFの工場へ運ばれる。
職人たちによって染色され、糸に紡がれ、セーターに編まれ....。
そしてそこにもまた数々の物語がある。
高級である意味をこころで納得した感じだ。
しかし、カシミアの持つ高級感は、日常生活に沿わせてこそ意味がある。
カシミアのセーターは、自分で丁寧に洗濯して着る。
というのが、もっとも自分になじむ付き合い方なのだそうだ。
今の仕事をしていると
「私は、このようなことを知ってものを買いたかったんだ」
と日ごろの漠然とした疑問への答えが突然提示されることが多い。
今日もそういった一日。