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ココロはいつも休暇中



かなり長くほっておいたら、熟成した?

吉田篤弘さんが書いたものは好きでよく読んでいるけれど、これは、加えて表紙&背表紙のイラストと、「...静かな声」という、タイトルに惹かれて書店に並んだその日に衝動買いした本。
タイトルの「小さな男...」のほうは、ほぼ視界に入ってなくて、家に帰って本を取り出し、「あれれ?こんなタイトルだったっけ」と驚いたのを覚えている。

たぶん病みあがりのエネルギーの無い時期で、無意識にでも心地よい静けさを求めていたんだと思う。毎日、都会ってうるさいなぁ...と思ってたからねあのころは。

で、そこまで気に入った本なのに、さすが、「...静かな声」だったからか、数ページ読むと必ず眠くなってしまって、読むのを断念。そんなのが続いて、長く積読状態に。

ふと思い立って、数日前から読み始めたけど...。
かなり長くほっておいたら、熟成した?_f0108825_10544581.jpg

なになに、これってかなり面白い本じゃないかっ!

ストーリーを追うというより、主人公の小さな男(百貨店の布団売り場勤務にして、自前の百科事典を執筆する)と、静かな声(深夜のラジオ番組のパーソナリティではあるが、あまりその素性は明かされていない)のたわいないが、不思議なたたずまいを持つ日常。
その日々をふと通り過ぎてゆくようなアイテムがいちいち宝物のようにいとおしいです。
例えば、静かな声の弟が手作りで作って売っている卓上灯。小さな男が通う読書クラブが「ロンリー「ロンリー・ハーツ読書倶楽部」て名前だったり...意味不明(笑)。
静かな声のいきつけの居酒屋の入口にはいつも「支度中」。
なになに?と思えば、それが店名だったり...。

...てな具合で、古い箱から子供のころの宝物がぞろぞろ飛び出してくる楽しさといったらいいのでしょうか?
もっとたくさんあるんですが、全部書くには、もう一度最初から読み直さないといけない気になるのでやめときます。

中でも一番好きなのは、この静かな声がやっているラジオ番組。
日曜日が終わって、月曜日にひっそりと移り行く深夜にはじまって数時間。独特のニュアンスを持っている静かな声で語られるのは、台本も打ち合わせも段取りも無く、ただ思いつきで話す内容だけ。
ああ、でも、そうゆうラジオ番組こそが、今日日ラジオっぽくないですか?
ちょっと聞いてみたいなぁ...なんて思いつつ、読み進めれば、それが、小さな男と静かな声をつなぐささやかな縁に。
ぼんやり、静かに物語りは進みつつ、きちんと希望あるエンディングってところが、吉田篤弘ワールドだなぁ。

ふと、この本を開いては幸せなうたたねをしていたあのころ。
実は、眠れない日々に、この物語から健やかな眠りをもらっていたのを思い出しました。
この本そのものが、深夜のラジオみたいかも。
by tao1007 | 2012-11-26 10:53 | 読書する
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カラダもココロも休暇中

by tao1007
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