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フィクションかと思ったらホントにあるらしい本屋

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第二次世界大戦の以前のパリに「シェイクスピア・アンド・カンパニー」という有名な書店があって当時の欧米人作家たちのたまり場のようなところだったとか。
たとえば、そこには、若き日々のガードルードスタインとかヘミングウェイとかフィッツジェラルドとか...が普通に集い語り合っていた。

この本は、それ関連の本かしら?

...と思って手にとって見れば、作家は1971年のカナダ人。
はしがきには、「この本は、僕がパリの古い奇妙な書店に逃げ込んだいきさつと、そこに滞在している間におきた主な出来事をつづったものである」とあって、次ページに目を転じれば、物語の冒頭1行目にも「その書店に行き着いたのは、どんよりと曇った、冬の日曜日のことだった」とある。

???
「シェイクスピア・アンド・カンパニー」は、ナチスドイツの介入なんかもあって、戦争中に閉店したんじゃあなかったっけ?
まだ実在するの?

いや、実在するんですよ。ちょっと違う書店なんですけどね。

物語の舞台となる「シェイクスピア・アンド・カンパニー」は、まったくの別人によって創業されて、今も、パリのセーヌ川を挟んだノートルダム大聖堂の向かい側に立っているのだと。
オープンは1951年、店主は、ちょっと風変わりなアメリカ人ジョージ・ホイットマン。
元祖シェイクスピア・アンド・カンパニーの店主シルヴィア・ビーチを敬愛するホイットマン氏は、ビーチの死後、彼女の書店を引き継ぐように店名をコノ名に変えたんだとか。

この書店は、その後、元祖と同様パリでは伝説的な店に。
一方、ガイドブックにも乗り、多くのツーリストのパリ市内の観光ルートのひとつになっているほどの敷居の低さもあるのか、今も同じ場所にあるらしい。(たぶん...。というのも、ここまで書いて、調べてみたら、なんと、昨年末に、オーナーのジョージ氏が亡くなっている!なので、ちょっと微妙ではある)

さて、物語は...といってもノンフィクションですが、カナダで事件記者をしていた作者が、ちょっとした厄介ごとに巻き込まれカナダを脱出し、一路パリへ。
職もなければ資金も底をつきはじめたそのときに、この奇妙な書店にいきつき、そこで暮らした日々の話。

まずは、書店に住むっていいなぁとうらやみつつ。
...本好きには、書店はいわば聖地でもありますからね。しかも欧米のそれはたたずまいもかなり素敵っ!
そう思うのもつかの間で、その書店の中で巻き起こる奇想天外すぎることにややビビル(笑)。
本を開いてその3分の1ぐらいまでたっても、ええっ!ほんとかよ。とか、パリだとこれってありえるのか?...とか言う具合。
もうフィクション(=作り話)としか思えない面白さですが、私が住むにはちょっとハードすぎです(笑)。

書店に住んでも、書物が一冊かけるぐらい大変って場合もあるわけね。
...と、初心を撤回しつつ読み終えました。

さて、この本に描かれているのは、2000年のシェイクスピア・アンド・カンパニー。
エキセントリックだけど、なんとなくチャーミングな店主ジョージ・ホイットマン(George Whitman)氏は、もうその時80代半ば。
でも、60歳以上年下の女性と恋をするほど元気でした。
この物語が翻訳されて日本の書店に並んだのが2010年。
そして、それから遅れること2年後に、物語を楽しんで、はて、ジョージ・ホイットマン氏はまだご存命なのかな?
...と調べてみたら、なんと、2011年12月14日に亡くなっておりました。
「シャイクスピア&カンパニー」書店の上の自宅で14日死去、98歳...と。

読後コノ事実とともに、サイトに掲載されているジョージさんのお顔と書店の写真を眺めたときのキブンはこう。
ああ、やっぱりホントにあったんだ!という喜びと。
だけど、間に合わなかったなという落胆。

この物語に登場する書店は、創作されたもののように奇想天外で面白く。その要でもあった店主も含め、すべてが魅力的だったからこその、嬉しかったり、悲しかったりなのでしょうね。

☆ちなみに、書店とジョージさんのお顔はこちらへ。
by tao1007 | 2012-09-07 22:48 | 読書する
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