「お父さん。どうして、かのこって名前にしたの?」
「かのこという名前がいい、って言われたからだよ」
「誰に?」
「鹿に」
「かのこちゃんとマドレーヌ夫人 」 ちくまプリマー新書読了後にこの冒頭近くにあったこの父娘のやりとりが気になって、「鹿男あをによし」(幻冬舎文庫)を再読するはめに...。
気になったのは、かのこちゃんのお父さんって、鹿男にされた主人公?...かも?
と思ったからなんでして、もちろん、何の答えも発見ならず。
あたりまえだ。
でも、この本、一度読んだにも関わらず、忘れてた部分が多数。
かなり重要な部分すら、すっかり記憶から抜けて、私の好きな、日本の神話や歴史的なモチーフもちりばめ部分を中心として、けっきょくまたも面白く読んだからまあいいか。
本のレビューは、かつて書かせていただいた
こちらで読んでいただくとして。
ほーっ!これはこれは、といまさらながらに感動したのは、鹿、狐、鼠たちが、1800年もの長きにわたって、何故に地震から日本人を守ってきたのかっていう、物語の根幹をなす部分。
ああ、忘れてましたよすっかりと。
京都、奈良、大阪の辺りでは、地震を起こすなまずのチカラを封じるために、60年に一度の神無月の満月の夜、厳かに儀式をとりおこなわなければならなくて、その儀式に欠かせない”目”を奪われてしまったから、さあたいへん。主人公の頭は鹿のそれに変えられて...って物語の筋は、もうTVドラマにもなったので有名ですが、そのなまずを抑える儀式の立役者たちは、それぞれ、春日大社の鹿、伏見稲荷の狐、大黒天の鼠。
それら、違う神様の眷属たちがなんでまたここに結集、わざわざ人間なんかのために1800年間もつとめてくださり、今後もずっと続けていただけそうな勢いですが?
こたえは、その儀式を依頼したのは、1800年前に生きていたとされる伝説の女王・卑弥呼。
鹿、狐、鼠たちは、もうそれはそれは、恋するほどに卑弥呼のことが大好きだったから...ってことでした。
そして、主人公たちがこぞって探し回った”目”とは、博物館などでもおなじみの「三角縁神獣鏡」のことでして、これも卑弥呼と邪馬台国がどこにあったか論争の種の一つ。
ああ、ここまで凝った話だったか!...と感心しきりなのであります。
さて、感心ついでに、万城目作品をもう一冊読みたくなって、今度はエッセイ集「ザ・万歩計 」(文春文庫)に手を出した。
ふふふっ、なんだ。
もしかしたら、かのこちゃんのお父さんって、万城目さん本人のことなんじゃない?
...と、やっとなぞが解けたようなキブンです。
気になるならば、最後の最後まできっちりお読みくださいね。