ココロはいつも休暇中



谷中リアルとフィクションがすごく仲良く息づいて

f0108825_21431817.jpg自分の住まいの近くに点在するショップや神社やとっておきの路地などなど...が、そのまんまの雰囲気で物語に登場していて、それが嬉しい。それらを、寺町下町の四季折々と併せふんだんに楽しみたくて書かれた...といった佇まいのお話。

主人公は、谷中のどこかで、アンテーク着物のショップ「ひめまつ屋」を営む女の子。
その店と住まいだけは、フィクションだけど、客人に伝えた根津駅までの近道を逆にたどれば、そのお店にたどり着くはずと、頭の中で道順をたどる。


根津駅から言問い通りの坂を上り、玉林寺の敷地から入る狭い路地。「とにかく路なりにどこまでもどこまでも進み、間違ったかなと思っても引き返さない。井戸があるからその横の階段を上り、更に先へと進む。」
それは、私も大好きな路地。
それが、「ささやきの小路」と呼ばれているのを初めて知った。(名付け親は作者かもしれないけれど...それは不明。)
路地は、妙福寺という寺の際に出て、今なら、八重桜がたわわに咲き誇る。
桜をみたら、先の丁字路を左。すると、この界隈の象徴のように愛されるヒマラヤ杉が見えてくる。

幾度もその前を通った記憶をたぐってみる。
それはあそこか?...と、物語に戻れば、店は坪庭もある築60年の三軒長屋の一軒とある。
さらに、記憶をたぐる、あのみかどパンの店舗は古い長屋を改装したものだったかしら...。ちょっと細かなところがわからない。

ああ、めんどくさい!実際に見に行こう!

もちろん、そこには「ひめまつ屋」さんはないけれど、何度もその前を行きつ戻りつしたヒマラヤ杉の下に古い三軒長屋は確かにあった。
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小川糸さんの2作目「喋々喃々」。
物語はこの場所を中心に、都心とは思えぬ高い空とか、寺から聴こえる読経の声、冬に防災を促す拍子木の音、くちなし垣根の初夏の香りとか、住んでなければ気づかないだろうささやかなアレコレをココかしこにちりばめて静かに静かに季節を繋ぐ。(作家は、ご近所さんなのか?それとも作家の才能なのか...。)

例えば...。
1月なら、上野東照宮の冬牡丹、湯島天満宮で天神さま使者の鳥「木鷽」が配られる鷽替行事。
2月は、近所のお豆腐やから豆腐を買って一人で針供養。個人で営む豆腐やさんがことのほか多い谷中界隈らしいな...としばし感心。
3月ならば、ちょっと足を伸ばして、湯島天神の梅を楽しみ。
4月は、もちろん桜。谷中霊園の並木道は外せないし、そのかたわらにひっそりと咲く、黄色い桜、鬱金桜のこともきちんと語られる。
5月は、根津神社のつつじ祭りに、厄除け粽。そして、我らが一箱古本市の名前も登場。
6月は、東大構内の三四郎池を水鏡にして眺め、湯島天神での夏越の祓の大きな茅の輪を8の字のカタチにくぐって厄払い。
7月は、七夕飾りを店先に飾り、近所の子どもが書いた短冊が賑々しい。...こんな感じもことのほか谷中的。下旬には、不忍の池の蓮がそろそろ咲き始め。遠くに隅田川の花火大会の音を聞く。
8月は盛りだくさんで、まずは、谷中全生庵で圓朝忌の寄席と、幽霊画のコレクションに真夏の夜の(上野)動物園。諏方神社のお祭りもある。
9月の15夜の翌週になれば、今度は根津神社のお祭りで、10月は、大円寺にて菊まつり、11月は鷲神社まで遠出し、商売繁盛を祈って酉の市。
12月は、師走の忙しさを抜けて、ふと思うのは歳が明けたら谷中の七福神巡りをしようと言うことで...という具合。

前作「食堂かたつむり」同様、美味しそうなごはんも健在で、登場人物たちは、美味しいものをもとめて、谷中をめぐり、湯島へ浅草へと、足を伸ばす。

ということで、美味しいものの覚え書きもしとこうか。

おやつ類→桃林堂の五智果、大黒屋の揚げおかき、根津神社の表参道口にある焼きかりんとう、芋甚の最中アイス、根津のたいやき、不忍の池の端にある和菓子のつる瀬の餡蜜と白玉ぜんざい、無縁坂まで遠出して本郷のオザワ洋菓子店の苺シャンテ、イナムラショウゾウのシュークリームとチョコレート専門店のお話も。
美味しいもの→乃池のアナゴ寿司、根津にあるお豆腐やさん須田の豆腐、そばやの鷹匠が朝7時半からやってることは、このお話で知った。讃岐うどんの根の津、燻製と野菜のイタリアンとはたぶん豚の人形の看板のあるアノ店か。日暮里駅前のそばや川村、鶯谷の古い洋食屋・香味屋と居酒屋鍵屋、湯島の居酒屋シンスケと旧岩崎邸の入り口附近にある鳥鍋や、浅草のアンジェラスや馬肉の中江。それと、谷中銀座商店街のお惣菜とメンチ、西日暮里のパン屋さん(店名は出ないがたぶんあそこ)など...。
カフェ→谷中ボッサ、NOMADO、千駄木倶楽部、古本カフェ・プーザンコ、湯島のTIESは、ご近所のまどかさんによって「春日通りの坂をまっすぐ行った消防署の手前あたりにある小難しい名前のカフェ」と表現されていた。

ちなみに、お菓子類は、そのご近所の可愛い老婦人、まどかさんの差し入れとして登場し、カフェや美味しいものやさんは、主人公のお相手春一郎さんとのデート先がダントツで、あとは、義理の母とかご近所の屋敷に一人住まいの粋な老人、イッセイさんと。美味しいものひとつとっても、食べる相手と店の雰囲気をあわせる工夫。作家は、ほんとに食べることを大切にしているようで。
外食をあまりしない私としては、住まいの近くにこんなに美味しいものがあるなんてと、嬉しいやら驚くやら...。

その他、朝倉彫塑館の屋上とか、芋坂から繋がり線路をまたいで駅の向こう口にわたる弧線橋とか、大名時計博物館、路地裏にひっそりとある花やに見えない花屋さんはたぶんあそこで、今はなき根津のオヨヨ書林もさりげなく登場し、界隈のみどころもけっこう網羅。

ないのは、ほんとに着物アンテークのひめまつ屋だけで、それがなんとも不思議な感じ。寺が集まるあたり、そのどこかに空間のひずみでもあって、ふっと、ひめまつ屋のある世界にいけちゃうのじゃないか...と思わせる。

そうゆう、ちょっとひとを喰ったようなところも谷中っぽいが、実はこの物語、静かにひっそりとした恋愛物語だったりもするのです。
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by tao1007 | 2009-04-15 21:10 | 読書する
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