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ココロはいつも休暇中



歩けばネタにあたる日々

歩けばネタにあたる日々_f0108825_14453780.jpg何気なく一冊読んだら、ことのほか面白かったのでさっそく借りてきたアーサービナード氏の著作。
「日本語ぽこりぽこり」...って変なタイトルだけど何?
どうやら、夏目漱石の句からとったようでして、漱石って俳句もものした?知らなかったぁ...。
まったく、コノ人の日本の知識...たいしたもんです。それとも私の教養不足かしらん?

さて、英語圏の言葉がことのほか氾濫するわが日本。その間抜けな間違いとか勘違いも数多く、眉間にしわ寄せ”けしからん!”と憂える英米国人...と思いきや、それをいちいちネタにして楽しむアーサー氏だよ。
たとえば、いつの日か私も見た記憶がある駅張りのポスター。芭蕉の句「閑けさや岩にしみ入る蝉の声」が英訳されていて、ちょっとしたデザインアクセントに。山形県の山寺へ旅情をいざなう旅のポスターだった。たしか私の記憶には、「へぇ...コノ句はこんな風に英訳するんだ」と感心した覚えまである。

どうやらソレがおかしかったらしい。

芭蕉の世界観などはもとより何も表現されておらず(とアメリカ人に言われてしまうところがやや情けないが)、それどころか何か不条理な世界に陥っているらしい。日本人相手のポスターだろうし(違うのか?英語圏からの来訪者向き?もうそこまでは覚えてません)、実は英訳する意味あったんだろうか?その語学力で...。
丁寧な解説及び、著者による英訳を読んで各所クスクスッと笑いつつも深く納得。そして、ちょびっと英語の勉強にもなった。
Tシャツに描いた文字が、デザイン重視で意味が変...という良くあるアレを、けっこう権威ある会社のポスターでもやっちまってるみたいですね(笑)私たち。
アーサー氏は、それを見つけて、しばし熟考。その際、”どんな風に料理しようか”...と、たぶん目は笑ってると推定。
いいなぁ...。”アーサー氏、街を歩けばネタにあたる”なわけです。
これじゃ毎日楽しかろうなぁ。

他にも、アメリカで暮らした当時の懐かしいモノの語源に日本文化の中で出会ってほくほくしたり。(柿はアメリカにもあって、「cachi」という、語源は日本のカキ。メキシコの皮ひもサンダルは、日本のわらじがはるばるわたって伝わったものだった...とかね。)

さらに、日本語で書かれた日本の常識にまで、ちょっと辛口のオブジェクション。...それがまたまた的を得ていて勉強になる。
例えば、まわってくるとちょっとがっかりする人が(たぶん)多いだろう、あの2000円札。
その裏面に源氏物語の雅な絵柄というのは誰もが知る事実としても、絵と物語の抜粋がかみ合ってないって知ってました?
「源氏物語絵巻」から「月の宴」の第二段の絵に、引用の詞書は第一段の「虫の音」なんだとか。
まあ、もはや、これは、微妙にしかたないですかねの範疇かも。「アメリカ人の身で良くぞ気づいた!天晴れアーサー」とか言ってごまかしちまおう..って感じなんですが...。
そこに、またまた”これはまずい”。という指摘が続きまして...。

札に刷られている物語「虫の音」の抜粋が、デザインの都合かなにかで文字面の下半分つまり各行の下方がばっさり断ち切られているらしい。うーん。ちょっと現物みたいですね。こうゆう時こそまわってこいよ2000円札!
例えば、身近な「お札」に掲載されたのだからテストに出るかも読んでおこうか...という受験生などがいたりして(いないか?)、札に向かって解読してもも意味不明。
そんなのをまことしやかに流通させるなよなぁ、なんかどうでもよさが加速するぜ2000円札。

たぶん専門家以外で、こんなことに気づいたのはアーサー氏以外にいないかもしれなくて、しかもこれって2003年に発表された文章でしてその後も世間は騒がなかった。
ほとんど誰もが、札に何か書いてあるかなんて気にしてない。ああ、これは日本人として由々しき問題かしら、いや、もしかしたら、巧みな偽札対策だったりしてな(笑)。なわけないだろ。

ふうーっ。
などなどなど...こんな話が本をめくれど押し寄せて飽きません。
英語・日本語バイリンガルで解せるひとが日本に住んで、実は、日々こんなに楽しい思いをしているのだろうか?と、思えば心底羨ましい。
少なくとも、アーサー氏にとって、日本語を学び、日常を楽しむ道具がひとつ増えたことは確かなようです。
by tao1007 | 2009-03-04 13:16 | 読書する
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by tao1007
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